日本史オンライン講座 秦野&松本

大学講師秦野裕介と高校教師松本恵司のコラボによる日本史オンライン講座。秦野先生が解説する「研究者と学ぶ日本史」、そこで学んだ知識を高校生向けにアレンジして松本が作った「高校生のための日本史」があります。
 090-5016-4520
お問い合わせ

「仰げば尊し」は二番が大切 てまきねこ2016.03

一昔前、卒業式の式歌は「仰げば尊し」と決まっていたが、近年は「贈る言葉」や「旅立ちの日に」が増えているようだ。

高校で学年主任をしていたとき、「仰げば尊し」を式歌にしようと思い立ち、歌詞や歌い方を調べてみたことがある。この曲は三コーラスで、一番は卒業生の師への感謝、二番は師の卒業生への説諭、三番は両者が一緒に過ごした学校での生活を振り返り「今こそ分かれ目いざさらば」で終わる。一番は卒業生、二番は教師、三番は両者で歌う構成になっているのである。生徒に尋ねてみると、ある中学校一校だけがそのように歌っていた。

「仰げば尊し」が姿を消した原因の一つとして、二番の「身をたて、名をあげ、やよ励めよ」がある。立身出世は時代にあわないという教師がいるらしい。「身をたて、名をあげ」を否定するのなら、卒業生の有名人を学校紹介に掲載するのは止めたら、と皮肉の一つも云いたくなる。が、問題の根っこはもっと深いところにある。

「信頼されている・期待されている」という自覚は生きるエネルギーとなる。であるなら「信頼しているよ・期待しているよ」というメッセージを送り続けることは、師が弟子に対して行う大切な責務の一つである。教育という営みは卒業式まで続く。だから、先人は「身をたて名をあげ、やよ励めよ」という歌詞を作ったのだろう。二番を必要とみるか不要とみるかに、先生の教育観が反映しているように思う。

「仰げば尊し」を、一番は卒業生が、二番は教師が、三番は全員で、と正しく理解して歌っていた学校は、旧制師範の流れをくむ大学の付属中学校であった。

 

670文字のエッセイ一覧

2019.11.21 Thursday